2008-01-01から1年間の記事一覧

『タイタンの妖女』 カート・ヴォネガット・ジュニア ハヤカワ文庫

「おれたちはそれだけ長い間かかってやっと気づいたんだよ。人生の目的は、どこのだれがそれを操っているにしろ、手近にいて愛されるのを待っている誰かを愛することだ、と」(P333) もし、人生の目的があるのなら、それはすごく単純なものでなくちゃいけない…

『タイタンの妖女』 カート・ヴォネガット・ジュニア ハヤカワ文庫

むかしむかし、トラルファマドール星には、機械とは全く違った生物がすんでいた。彼らは信頼性がなかった。能率的でもなかった。予測がつかなかった。耐久力もなかった。おまけにこの哀れな生物たちは、存在するものすべて何らかの目的を持たねばならず、ま…

『タイタンの妖女』 カート・ヴォネガット・ジュニア ハヤカワ文庫

「それからおれは、自由になるんだぞと自分に言い聞かした。そして、それがどんなことなのか考えてみた。おれの見えるのは人間どもだけだった。やつらは俺をこっちへ押し込んだり、あっちへ押しのけたりする。そして、何をやっても気に食わず、何をやっても…

『タイタンの妖女』 カート・ヴォネガット・ジュニア ハヤカワ文庫

もし、きみのパパが、地球の今までの誰よりも利口で、どんなことでも知っていて、なんにでも正しいことが言えて、その上自分が正しいことをちゃんと証明できる人だったとしよう。つぎに、ここから百万光年向こうの、ある素敵な世界にも一人の子供がいて、そ…

『人生は生きるに値するか』 ウィリアム・ジェームス

生徒『人生は生きるに値するか?』 ウィリアム・ジェームス『まず、その問いは証明不可能だから、わからない。でも、わからないからこそ、「人生は生きるに値することにしよう」「そういう信念を持つから歩み出せるんだ」、つまり、歩んでいるからこそ、なに…

『村上春樹、河合速雄隼雄に会いに行く』 新潮社版 2

河合:現代の一般的風潮は、「できるだけ、早い対応、多い情報の獲得、大量生産」をめざして動いています。そして、この傾向が人間のたましいに傷をつけ、その癒しを求めている人たちに対して、われわれは一般的風潮の全く逆のことをするのに意義を見出すこ…

『村上春樹、河合速雄隼雄に会いに行く』 新潮社版

河合:日本では、自と他の区別は西洋のように明確でなく、「私」と言っても、それは「世界」と同一とさえいえる。このようなあいまいさを巧妙に用いた私小説は、欧米人が「自分自身」のことを語っているのとは全く異なる。それが成功した際は身辺の雑事が「…

『彼女について』 よしもとばなな 文芸春秋 3

この世は生きるに値すると思う力よ。抱きしめられたこと、かわいがられたこと。それからいろいろな天気の日のいろいろな良い思い出を持っていること。おいしいものを食べさせてもらったこと、思いついたことを話して喜ばれたこと、疑うことなく誰かの子供で…

『彼女について』 よしもとばなな 文芸春秋 2

そうか、ピクニックそのものよりも、そのイメージで人は活気づくんですね。イメージがすべてなんだ。でもイメージ以上のものを知るには、今の瞬間にぐっと参加することしかないんだ。(P213) 参加すること、つまり、コミットすることだと思うんですが、コミ…

『彼女について』 よしもとばなな 文芸春秋

かごの中にはお菓子がいくつかとオリーブとワイン。まるで普通のカップルの買い出しみたいだった。この時間こそが積み重なって人生を作る血や肉となり、抽象的にも一番大事なものなのだと、私にはわかってきていた。(P180) 恋人との買い物だけでなく、家族と…

『はたらきたい。』 ほぼ日就職論 東京糸井重里事務所 3

糸井「きっと、今の時代の人たちって、自分のルールや法律がひとつで済んでる人っていないと思うんですよね。自分の中に二つのルールを抱えていて、何とかバランスをとっていかなくちゃならない。」(中略)しりあがり寿「うん。大事なことが二つあるんでし…

『はたらきたい。』 ほぼ日就職論 東京糸井重里事務所 2

いろんな生き方があっていいよ。自分の時間を大事にするのもわかるよ。わかるけど、将来結婚するかもしれないでしょ。子供ができるかもしれないでしょ。子供ができたら、金かかるよ。それでも、そのスタンスを変えないんだったら、それも立派なひとつの生き…

『はたらきたい。』 ほぼ日就職論 東京糸井重里事務所 1

自分にとって、本当に大事なことって何だろう。自分にとって、本当に大切な人って誰だろう。このふたつを、本気で思っているだけで、いい人生が送れるような気がする。糸井重里 P263 「何が君の幸せ、何をして喜ぶ。わからないまま終わる。そんなのはいやだ。…

『のび太の結婚前夜』 藤子・F・不二雄

「のび太君を選んだ君の判断は正しかったと思うよ。あの青年は人の幸せを願い、人の不幸を悲しむことのできる人だ。それがいちばん人間にとってだいじなことなんだからね」 のび太との結婚式の前夜、残していく父と母を心配したしずかちゃんに向け、しずかち…

『窓ぎわのトットちゃん』 黒柳徹子 講談社出版 1

先生はトットちゃんに言った。「トットちゃん、そのリボン、ミヨがうるさいから、学校に来るとき、つけないで来てくれると、ありがたいんだけどな。悪いかい、こんなことたのんじゃ」トットちゃんは、腕を組んで、立ったまま、考えた。そして、わりと、すぐ…

『フラニーとゾーイー』 J.D.サリンジャー 新潮文庫 5

シーモアは、とにかく(靴を)磨いて行けって言うんだな。『太っちょのオバサマ』のために磨いて行けって言うんだよ。(中略)それから、よく聴いてくれよ、この『太っちょのオバサマ』というのは本当は誰なのか、そいつが君にわからんだろうか?…ああ、きみ…

『フラニーとゾーイー』 J.D.サリンジャー 新潮文庫 4

信仰生活でたった一つ大事なのは『離れていること』だということが飲み込めなくては、一インチたりとも動くことができないんじゃないか。『離れていること』だよ、きみ、『離れていること』だけなんだ。欲望を断つこと。『一切の渇望からの離脱』だよ。本当…

『フラニーとゾーイー』 J.D.サリンジャー 新潮文庫 3

神にささげられた一杯のチキン・スープが鼻先におかれてもそれと気づかないというのに、本物の信心家を一体どうやって識別するつもりなんだ?(P224) 母の味とその想い。見た目と味はともあれ、一番安心します。フラニーとゾーイー (新潮文庫)作者: サリン…

『フラニーとゾーイー』 J.D.サリンジャー 新潮文庫 2

きみは事実にまっこうから立ち向かうということをしない。最初に君を心の混乱に陥れたのもやはり、事実にまっこうから立ち向かわないという、この態度だったんだ。そんな態度では、そこから抜け出すこともおそらくできない相談だぜ。(P194) 『イエスの祈り…

『考えるヒント』 小林秀雄 文春文庫8

歌人達は、歌の独立的価値を知らぬどころではない、むしろ知り過ぎて孤立している。技芸の一流と化して社会から孤立し、仲間同士の遊びを楽しみ、社会の常識も歌の事は知らぬすましている、悲しい哉と考えるのである。彼(本居宣長)の歌の道とは、歌をこの…

『考えるヒント』 小林秀雄 文春文庫7

個人主義の時代は去ったという。そうかも知れない。個人主義の思想の欠陥をつく考え方は、いくらでもできよう。だが誰も実際の生活の上で、個人という或る統一体の形でしか生きようがないという基本の事実には歯が立つわけがない。個人主義の問題と個人の問…

『考えるヒント』 小林秀雄 文春文庫6

良心とは、はっきりと命令もしないし、強制もしまい。本居宣長が、見破っていたように、おそらく、良心とは、理知ではなく情なのである。彼は、人生を考えるただ一つの確実な手掛かりとして、内的に経験される人間の「実情」というものを選んだのだ。(中略…

『考えるヒント』 小林秀雄 文春文庫5

道徳の客観的原理などに誰が歯向えよう。みんな屈従するより他はない。ひとつの原理に反抗することができるのも、別の原理に屈従すればこそだ。道徳が、外部から来る権威の異名なら、道徳は破壊か屈従かの道を選ぶほかあるまい。手間を省いて考えれば、道徳…

『考えるヒント』 小林秀雄 文春文庫4

考えるとは、合理的に考えることだ。どうしてそんな馬鹿気た事が言いたいかというと、現代の合理主義的風潮に乗じて、物を考える人々の考え方を観察していると、どうやら能率的に考えることが、合理的に考えることだと思い違いしているように思えるからだ。…

『考えるヒント』 小林秀雄 文春文庫3

人を笑うのだけが笑いではない。子供ならみんな知っている。生きるのが楽しい絶対的な笑いもある。いよいよ増大する批評的笑いの不安と痙攣の中で、この笑いを、恢復しようとしたのがディズニーの創作であったと考えてもいいだろう。 ディズニーの作品は、大…

『考えるヒント』 小林秀雄 文春文庫2

嫌いという感情は不毛である。侮蔑のいく道は袋小路だ。いつの間にか、そんな簡明なことになった。誤解してもらいたくはないが、これは私の告白で、主張ではない。いや、いつの間にか、主張するより告白することを好むようになった。(P36) 何かを嫌いだと…

『ヒューマン2.0』 渡辺千賀 from 小鳥ピヨピヨ

先入観(メンタルマップ)と現実のズレの話も面白かったです。「世界はこうあるはず」というメンタルマップと現実にズレがある場合どうするか。人間の性質としては、「おかしい、世界はこうのはずだ」と、現実世界をメンタルマップの方に合わせようとしてし…

『徹子の部屋』 茂木健一郎

黒柳:学校の勉強ですよ?自分で選べないじゃないですか。 茂木:学校の勉強も本当の学問に通じていると信じる。 (中略) 茂木:学びの最大の成果とは、自分が変わること。あと、世界が変わって見えることだ。 少ないながら、これまで国内外・国籍を問わず…

『考えるヒント』 小林秀雄 文春文庫

ソクラテスは、大衆の教育だとか、民衆の指導だとかいう美名をまったく信じていない。(中略)ソクラテスは、この世に本当の意味での教育というものがあるとすれば、自己教育しかない、或はその事に気付かせるあれこれの道しかないことを確信していた。(P27…

『父の詫び状』 向田邦子 文春文庫

どんなに好きなものでも、気持が晴れなければおいしくないことを教えられたのは、この鰻屋だったような気もするし、反対に多少気持はふさいでも、おいしいものはやっぱりおいしいと思ったような気もする。どちらにしても、食べ物の味と人生の味と二つの味わ…