『考えるヒント』 小林秀雄 文春文庫5

道徳の客観的原理などに誰が歯向えよう。みんな屈従するより他はない。ひとつの原理に反抗することができるのも、別の原理に屈従すればこそだ。道徳が、外部から来る権威の異名なら、道徳は破壊か屈従かの道を選ぶほかあるまい。手間を省いて考えれば、道徳の問題は、力と力の争いの問題になり下がる。(P69)

昔より、ほかの人の主張と自分の主張とではどちらが公正かということが気にならなくなりました。その判定の先にあるものが、いくら公正に判断しようとしても、結局は自分の正当化でしかないという風に感じるからです。



新装版 考えるヒント (文春文庫)

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