2009-03-01から1ヶ月間の記事一覧

『悼む人』 天童荒太 文芸春秋 2

お前をにしたものは、この世界にあふれる、死者を忘れ去っていくことへの罪悪感だ。愛する者の死が、差別されたり、忘れられたりすることへの怒りだ。そして、いつかは自分もどうでもいい死者として扱われてしまうのかという恐れだ。(P296) 生死について取り…

『悼む人』 天童荒太 文芸春秋

彼女は、人物の分析よりも、その人と会って自分が何を得たかが大切ではないか、と問いかけてきた。「静人は、あなたにはどううつったんです。あなたには、何を残しましたか。」(P253) 以前、梅田さんの本の引用から、「日本では、対象の悪いところを探す能力…

『カラマーゾフの兄弟(上)』 ドストエフスキー 新潮文庫 3

仮に俺が人生を信じないで、愛する女性にも幻滅し、世の中の秩序に幻滅し、それどころか、すべては無秩序な呪わしい、おそらくは悪魔的なカオスなのだと確信して、たとえ人間的な幻滅のあらゆる恐ろしさに打ちのめされたとしても、それでもやはり生きていき…

『カラマーゾフの兄弟(上)』 ドストエフスキー 新潮文庫 2

懲罰と言っても、今この方が言われたとおり、たいていの場合ただ心をいらだたせるにすぎぬ、機会的な懲罰ではなしに、唯一の効果的な、ただ一つ、威嚇と鎮静の働きを持つ、己の良心の自覚に存する本当の懲罰のことですぞ。(P153) 職業柄の引用です。現在、学…

『カラマーゾフの兄弟(上)』 ドストエフスキー 新潮文庫

不幸なことに、これらの青年たちは、生命を犠牲にすることが、おそらく、数限りないこうした場合におけるあらゆる犠牲のうちで最も安易なものであることを理解していないし、また、たとえば、青春に沸き立つ人生の五年なり六年なりを、辛い困難な勉学や研究…