2009-01-01から1年間の記事一覧

『人生の旅をゆく』 よしもとばなな 幻冬舎文庫

1旅は、その旅がいくらひどくても、その思い出はすばらしいものになる。 何か過剰に精神的な期待をしている感じ、それが採っても嫌いなのだ。(P22) たぶん、彼女にとってはかけたい時が電話をするときで、会いたい時が会うときで、心配な時心配するとき、好…

『チエちゃんと私』 よしもとばなな 文春文庫

だから、私はある時点からまじめに何がしたいかを考え、何ができないかだけを考えた。いたずらに成り行きにまかせてだらだら生きるほどには、非現実的ではなかった。私のしていることは瞬間を読んでは考えを変えていくゲームであり、私にとってはそれが人生…

『恋愛について話しました』 岡本敏子×よしもとばなな イーストプ

山登りにいったりいろいろした。でお、おもしろいのよ。テントを張るでしょう。私なんてかなり男っぽいほうなんだけど、一晩テントを張って、そこでご飯とか作ったりして寝ると、なんとなくコンフォータブルな生活に愛着ができちゃって、それで次の日の朝、…

『人生って?』 よしもとばなな 幻冬舎

私は、その人にとっての優しさを定義するのは「育ち」だと思います。親のしたように、自分の環境でそうであったように。もしくは親がしてくれなかったこと、自分の環境になかったもの。…をひとが「優しさ」と判断するのであって、まさに人それぞれです。たと…

『はじめての文学 よしもとばなな』 よしもとばなな 文藝春秋 

「私は、あったかいもののほうを大切にする。ちゃんとこういうからくりを見破ることができる男の人を捜そう、絶対にいるはずだから。」(P184 ともちゃんの幸せ) こういう基準って大切です。 このはじめての文学シリーズっていろいろな作家のがあるんですね。…

『フォーサイト 12月号 「人間学としての経済学 第5回」』 堂

「自然は人類を苦痛と快楽という二人の主人の支配のもとにおいてきた。われわれが何をしなければならないかを指示し、また、われわれが何をするであろうかを決定するのは、ただ苦痛と快楽だけである。」(ベンサム『道徳及び立法の諸原理序説』一七八九) 僕…

『「赤毛のアン」に学ぶ幸福になる方法』 茂木健一郎 講談社文庫

「赤毛のアン」は、人生においてもっとも重要なことが書かれている本だ、と思っていたので購入してみました。 そういう言い方でいいのかな?という部分もありましたが、共感できる内容がとても多かったです。 明らかに何かが、日本とは決定的に違う。社会が…

『はじめてのことがいっぱい』 よしもとばなな 新潮文庫

作家としては天職なのである程度のところまでいけるが、他のお仕事をしたら私のポジションは会社でもフラでもカフェのウェイトレスでも「実力は中の下、体が弱すぎて戦力外だがムードメーカーとしては上級である。」というところだと冷静に判断できる。作家…

『The Goal 』 エリヤフ・ゴールドラット 三本木亮訳 ダイヤモン

指標は、三つあって、それぞれ『スループット』『在庫』『作業経費』と呼ぶことにした。(中略)『スループット』とは、販売を通じてお金を作り出す割合のことだ。『在庫』とは、販売しようとするものを購入するために投資したすべてのお金のことだ。『作業…

『自虐の詩 上・下』 業田良家 竹書房文庫

おかあちゃん、これからは何が起きても怖くありません。勇気がわいてきます。この人生を二度と幸や不幸ではかりません。なんということでしょう。人生には意味があるだけです。ただ人生の厳粛な意味をかみしめていけばいい。勇気がわいてきます。(下巻P267…

『THE CHOICE』 エリヤフ・ゴールドラット ダイヤモンド社

人はもちろんのこと、人が作り出すものすべてを含んでいる。ものごとは収束する、ものごとはシンプルだと言ったが、これは、この現実世界すべてに当てはまることなんだ。現実というのは、すばらしいまでのシンプルさの上に成り立っているんだよ。(P63) 「人…

『恋について僕が話そう』 秋元康 大和書房

ダイヤモンドの指輪をはめることも自己満足かもしれないけど、お茶を飲んで茶柱が立っているのを見つけることをも自己満足かもしれない。(P128) 著者は、自己満足がいくつあったかということが、人間の一生を楽しく送れたかということにつながると書いてい…

『1Q84 BOOK2』  村上春樹 新潮社

「ただね、そいつが脇目もふらずネズミを木の塊の中から『取り出している』光景は、おれの頭の中にまだとても鮮やかに残っていて、それは俺にとっての大事な風景の一つになっている。それは俺に何かを教えてくれる。あるいは何かを教えようとしてくれる。人…

『1Q84 BOOK2』  村上春樹 新潮社

世界とは、「悲惨であること」と「喜びが欠如していること」との間のどこかに位置を定め、それぞれの形状を帯びていく小世界の、限りない集積によってなり立っているのだという事実を、窓の外のその風景は示唆していた。 しかしその一方で、世界にはふかえり…

『車輪の下』 ヘルマン・ヘッセ 新潮文庫 3

誰がより多くのひどい苦しみを受けるか。先生が生徒から苦しめられるのか。両者のいずれがより多く暴君であるか。両者のいずれがより多く苦しめ手であるか。他方の心と生活とを損ない汚すのは、両者のいずれであるか。それを検討すれば、誰しも苦い気持ちに…

『車輪の下』 ヘルマン・ヘッセ 新潮文庫 2

教師の義務と、国家から教師にゆだねられた職務は、若い少年の中の粗野な力と自然の欲望とを制御し除去し、その代りに、国家によって認められた静かな中庸を得た理想を植え付けてやることである。いまは幸福な市民や熱心な役人になっている人たちの中にも、…

『車輪の下』 ヘルマン・ヘッセ 新潮文庫

そして、科学的な人は、新しい皮袋のために古い酒を忘れ、芸術的な人は、数々の皮相な誤りを平気で固守しながら、多くの人に慰めと喜びを与えてきた。それは批判と創造、科学と芸術、この両者間の昔からの、勝負にならぬ戦いだった。その戦いにおいては、常…

『悼む人』 天童荒太 文芸春秋 2

お前をにしたものは、この世界にあふれる、死者を忘れ去っていくことへの罪悪感だ。愛する者の死が、差別されたり、忘れられたりすることへの怒りだ。そして、いつかは自分もどうでもいい死者として扱われてしまうのかという恐れだ。(P296) 生死について取り…

『悼む人』 天童荒太 文芸春秋

彼女は、人物の分析よりも、その人と会って自分が何を得たかが大切ではないか、と問いかけてきた。「静人は、あなたにはどううつったんです。あなたには、何を残しましたか。」(P253) 以前、梅田さんの本の引用から、「日本では、対象の悪いところを探す能力…

『カラマーゾフの兄弟(上)』 ドストエフスキー 新潮文庫 3

仮に俺が人生を信じないで、愛する女性にも幻滅し、世の中の秩序に幻滅し、それどころか、すべては無秩序な呪わしい、おそらくは悪魔的なカオスなのだと確信して、たとえ人間的な幻滅のあらゆる恐ろしさに打ちのめされたとしても、それでもやはり生きていき…

『カラマーゾフの兄弟(上)』 ドストエフスキー 新潮文庫 2

懲罰と言っても、今この方が言われたとおり、たいていの場合ただ心をいらだたせるにすぎぬ、機会的な懲罰ではなしに、唯一の効果的な、ただ一つ、威嚇と鎮静の働きを持つ、己の良心の自覚に存する本当の懲罰のことですぞ。(P153) 職業柄の引用です。現在、学…

『カラマーゾフの兄弟(上)』 ドストエフスキー 新潮文庫

不幸なことに、これらの青年たちは、生命を犠牲にすることが、おそらく、数限りないこうした場合におけるあらゆる犠牲のうちで最も安易なものであることを理解していないし、また、たとえば、青春に沸き立つ人生の五年なり六年なりを、辛い困難な勉学や研究…

『悪女について』 有吉佐和子 新潮文庫 2

兄ちゃんだって一流の家庭教師いっぱいつけたんだよ。そりゃ兄ちゃんは僕と違って素質があったからさァ、家庭教師をつけたことが十分意味があったよね。だけど、ママが一生懸命じゃなきゃ、中野の公立にいただけじゃ、あんな最高の大学に入れたかどうか分か…

『悪女について』 有吉佐和子 新潮文庫

男社会を逆手にとり、しかも女の魅力を完璧に発揮して男たちを翻弄しながら、豪奢に悪を楽しんだ女の一生をつづる長編小説。(帯書評) 本文の引用ではないです。面白い小説だったので、読書記録として。 女の悪の部分がテーマの小説家と思ったんですが、読…