『車輪の下』 ヘルマン・ヘッセ 新潮文庫 2

教師の義務と、国家から教師にゆだねられた職務は、若い少年の中の粗野な力と自然の欲望とを制御し除去し、その代りに、国家によって認められた静かな中庸を得た理想を植え付けてやることである。いまは幸福な市民や熱心な役人になっている人たちの中にも、学校のああした努力が加えられなかったら、奔放で向う見ずな革新家か、無為な思念をこととする夢想家になったものも、少なくないであろう。少年の中には、ある粗暴なもの、乱暴なもの、野蛮なものがある。それがまず打ち砕かれなければならない。また少年の中にある危険な炎がまず消されねば、踏み消されねばならない。自然に作られたままの人間は、計ることのできない、見通しの聞かない、不穏なあるものである。それは、未知の山から流れ落ちてくる奔流であり、未知も秩序もない原始林である。原始林が切り透かされ、整理され、力でもって制御されねばならないように、学校も生まれたままの人間を打ち砕き打ち負かし、力でもって制御しなければならない。学校の使命は、おかみによって是とされた原則に従って、自然のままの人間を、社会の有用な一員とし、やがて兵営の周到な訓練によってりっぱに最後の仕上げをされるはずのいろいろな性質を呼び覚ますことである。(P58,59)

時代が違うせいか、いまいち納得できない教育観であるように感じますが、どうなんでしょう。やはり、原始林は整理され、制御されねばならないものなんでしょうか。


車輪の下 (新潮文庫)

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