『THE CHOICE』 エリヤフ・ゴールドラット ダイヤモンド社

人はもちろんのこと、人が作り出すものすべてを含んでいる。ものごとは収束する、ものごとはシンプルだと言ったが、これは、この現実世界すべてに当てはまることなんだ。現実というのは、すばらしいまでのシンプルさの上に成り立っているんだよ。(P63)

「人を責めてみても、問題の解決にはならない。」
そう父が言いかけたところで、私は言葉をはさんだ。「でも、ソリューションを見つけるヒントにはなるわ」
「それこそが問題なんだよ。人を責めると、間違った方向に行ってしまう。正しい方向からどんどん遠ざかってしまって、よいソリューションなんか見つからなくなってしまう。もし相手を排除することができたとしても、ほとんどの場合、本当の問題は残ったままになる。それだけじゃない…、人を責めるのは、火に油を注ぐようなもので、関係をわざわざ悪くするようなものだ。調和など、保てるわけがない。」(P95)

父は、いかなる関係にも調和が存在すると言っていた。ようやく、その意味が私にもわかり始めてきた。もちろん、すべての関係が良好で調和がとれているわけではない。父は、そんなことを言っているのではない。いかなる関係においても、両者の利益につながるような変化が存在し得ると言っているのだ。(中略)たとえいま、それがどのような変化か気付いていなくて、調和とは程遠い関係にあったとしても、そうした変化は存在すると言っているのだ。(P121)

改善ーもし、システムをどこまでも改善し続けたら、素晴らしいシステムが出来上がるはずである。しかし、それでもまだ改善の余地はある。ただし、改善努力を始めた最初のころほどの劇的な改善は望めない。収穫逓減の法則だ。しかし、父の場合は少し違う。父が改善努力の話をするときは、いつも大きなブレークスルーについてだ。それまでとは全く違う未知の領域、高い次元を切り開くような話なのだ。(P150)

そして、もちろん一番大きな変化が求められるのは営業だ。これまでのように、もっともっと買ってください(特に月末、また四半期末)と常にプッシュする営業スタイルから、小売店の真のニーズ(適正在庫を保ち、実際の消費量に合わせて商品を補充することで、在庫の回転率を向上させる)に合わせたパートナーシップ構築型の営業スタイルへ移行しなければいけない。しかし、それはそうたやすいことではない。(P163)

「明晰に思考する鍵は、循環ロジック、つまり議論がぐるぐると同じところを堂々巡りするのを避けることだ。それだけだ」(P190)

「そして、そういう時にこそ『ものごとは、そもそもシンプルである』という考えが役に立つんだ。どんどん掘り下げていくと、原因は収束していく。収束とは、根本的な原因にはひとつの結果だけではなく、複数の結果が伴うことを意味する。つまり、『ものごとは、そもそもシンプルである』ということを信じることができれば、どんな原因にも、それに伴って少なくとも二つ異なる結果が生じていると思って間違いない」(P198)

「人は自分の利益を守ろうとするものだし、それが上手いってことね」
「いや、そういうことじゃなくて、カルチャーの話だ。何のためらいもなく、人の名誉を傷つけるカルチャーだよ。むしろ、それを奨励している」(中略)
「自分はそんなことはないなんて考えてはだめだ。自分もそのカルチャーの一部だと考えないといけない。特に人がかかわっている状況において直感を使って原因を探し求めるとき、人を中傷するような仮説を立ててしまう可能性が高くなるんだ。そして、その誤った仮設を有効だとする結果ばかりをあげて、無効とする結果は無視してしまう。だから、よくよく注意しておかないといけない。でないと、せっかくの分析がまったくの無駄になってしまうんだ」(P207)

的確な説明とは、正しい原因と結果の関係を立証する事実を提供できる説明のことを意味するが、これにも劣らず重要なのは、そうした事実をもって、経営陣が持っている既存の推論が有効でないことを立証できることだ。とちろん新しい原因と結果の関係を提示できたとしても、それがすぐ全面的に支持されることなど期待してはいけない。大事なのは、経営陣が従来の自分たちの推論に、もしかしたら間違いがあるのではないかとその有効性を疑い始め、私たちが提示した原因と結果の関係のほうが正しいのではないかと考え始めることだ。(P248)

たとえばロジックを展開するために、その事柄に関する直感を働かせたとしよう。明晰に考えることができればできるほど、感情はどんどん深まっていく。そして、感情が深くなればなるほど、直観はさらに強くなっていく。さらに直感が強くなればなるほど、ロジックをうまく展開できる可能性は高まり、ひいては、良好な結果につながる可能性も高まっていく。(P254)

自分のコントロールの及ぶ範囲じゃないとか、自分の能力を超えているなどと言ってはだめだ。自分自身の人生なんだから、自分ですべて責任を持たなければいけない。そうすることで、充実した有意義な人生を送ることができるようになるんだ。だけど、それは決して簡単なことではない。人というものは、愚痴をこぼしたり、不平不満を言ったりするのが大好きな生き物だ。だが、実際、私はそうした楽しみとは、おさらばしなければならなかったんだ(P257)


まだまだ理解できていない部分が多いですが、建設的な考え方をしていくことへの示唆に富んだ本でした。対立の根本的な原因は、双方の前提の食い違いにある。そして、その前提はシンプルである。引用文のほかにもまだまだおもしろいことが書いてありました。間違った原因と結果を訂正するには、できるだけ事象を細分化していくことで、相手との交渉をうまく進めていけるということも個人的には印象に残った内容でした。


ザ・チョイス―複雑さに惑わされるな!

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