『1Q84 BOOK2』  村上春樹 新潮社

「ただね、そいつが脇目もふらずネズミを木の塊の中から『取り出している』光景は、おれの頭の中にまだとても鮮やかに残っていて、それは俺にとっての大事な風景の一つになっている。それは俺に何かを教えてくれる。あるいは何かを教えようとしてくれる。人が生きていくためにはそういうものが必要なんだ。言葉ではうまく説明はつかないが意味を持つ風景。俺たちはその何かにうまく説明をつけるために生きているという節がある。俺はそう考える。」(P371)

この小説では、過去の風景とか、こういう風景がポイントになるのかなと思いました。自分にとってのそういう風景ってどういうものだろうと考えてみると、きれいな高い弧を描いて自分のトスがエースに向かって飛んで行くところだったり、光の量と色彩のバランスが鮮やかな海の風景だったり、そこで飲んだおいしいビールだったりのことでしょうか。青豆にとっての天吾みたいに、生きる根拠の対象が人でないというのはかなりさびしいことかもしれないとあせってしまいます。


1Q84 BOOK 2

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