『タイタンの妖女』 カート・ヴォネガット・ジュニア ハヤカワ文庫

「それからおれは、自由になるんだぞと自分に言い聞かした。そして、それがどんなことなのか考えてみた。おれの見えるのは人間どもだけだった。やつらは俺をこっちへ押し込んだり、あっちへ押しのけたりする。そして、何をやっても気に食わず、何をやっても仕合せになれないもんだから、よけいにカッカする。それからこんどは、おれがやつらを仕合せにしなかったことをぶつくさ言いだし、また押し合いへしあいをやらかすんだ。(中略)
おれはなにもわるいことをしないで、いいことのできる場所を見つけた。おれはいいことをしてるのがじぶんでもわかるし、俺がいいことをしてやってる連中もそれがわかってて、ありったけの心で俺に惚れている。アンク、おれはふるさとを見つけたんだ。」(P228)

この発言をしたのは、ボアズという登場人物です。彼は、社会に戻って自由に暮らすことを選ばずに、非常に孤独な閉鎖的な空間で、ある微生物のようなものと一生を送ることを選択します。私の願望もこの形に非常に近いので、なんとも言えない心境でした。
前回のエントリーの表現を借りると、自分が正しいと思うだけの殻に閉じこもっていたい。これ以上傷つくのは嫌だという心境なんでしょう。でも、なぜか腑に落ちない。その理由は二つ後のエントリーのようなことが原因なのかな。