『生きることと考えること』 森有正 講談社現代新書 4

私がそれに向かって自分の注意を集中し、それを自分なりにオーガナイズしようとしている、その当体を「もの」というのです。(P200)

ただぼんやりと目の前にあるものがものでもないし、ぼんやり時間を過ごすことが経験でもないわけです。(P201)

一番大事なことは、そういう「もの」と触れていく生活の中ではじめて、人間の生きる喜びというものが感じられてきて、それ以外にはほんとうの喜びはない。(P202)


何かに自分から主体的に関わることによって経験が得られる。人間のほんとうの喜びはそれ以外にない。自分が考えたり話したりするときに用いる「言葉」は、その経験をラベリングしたものしか使ってはならない。現代で生きていくには常にそういう言葉の使い方をするのは絶望的に難しいですが、喜びを得られる方法がそうしかあり得ないというのが、正しい生き方ということになるでしょうか。主体的に関わる対象である「もの」は、自分で選んだり、外から強制されたりすると思いますが、どんな局面でも楽観的に主体的にかかわることのみが生きる喜びになるわけですね。わかりやすくていいですね。


生きることと考えること (講談社現代新書)

生きることと考えること (講談社現代新書)