『夜中の薔薇』 向田邦子 講談社文庫 4

読書は、開く前も読んでいる最中もいい気持だが、私は読んでいる途中、あるいは読み終わってから、ぼんやりするのが好きだ。砂地に水がしみとおるように、体のなかになにかがひろがってゆくようで、「幸福」とはこれをいうのかと思うことがある。

人間には、人生を幸せに過ごすために生まれもった素養があると思っています。そういう意味で人生の質は生まれた時点でかなりの部分決まっている。向田邦子の人生は豊かだっただろうと思います。でも、生まれた後で身につけられるものもあり、自分の貧しい感受性を少しでも豊かにしたい。そういう思いで彼女の本を読んでいる気がします。


夜中の薔薇 (講談社文庫)

夜中の薔薇 (講談社文庫)